学生の国民年金保険料~払わなくても良い?払わないとどうなる?
成人年齢が18歳に引き下げられたとはいえ、20歳の誕生日は本人にとっても、親御さんにとっても感慨深いものでしょう。人生の一つの節目となることは、間違いありません。
20歳になるとできることが増える一方で、義務も発生します。
その一つが、国民年金への加入です。
今回は日本年金機構から案内の封書が届いたらどうすればよいのか、お伝えしていきます。
目次
1.国民年金保険料とは
国民年金制度の概要
そもそも、国民年金制度とはどうのような制度なのでしょうか。
国民年金(基礎年金)は20歳以上60歳未満のすべての方が加入を義務付けられている公的年金です。いま働いている世代(現役世代)が支払った保険料を、仕送りのように高齢者などの年金給付に充てる「世代と世代の支え合い」という考え方を基本として、運営されています(保険料収入以外にも、年金積立金や税金が年金給付に充てられています)。
また、現役世代に万が一の事が起きたときに遺族の生活を保障したり(遺族年金)、障害状態となったときに生活を支える役割(障害年金)も持っています。
公的年金には他にも、会社員や公務員が加入する厚生年金があり、会社員や公務員は公的年金保険料として、国民年金保険料と厚生年金保険料の両方を勤務先を通じて納付しています。給料から天引きされているので、納付を忘れるということはありません。
一方で、学生・農林漁業者・自営業・無職の方等は、毎月一定額(令和5年度は16,520円)の保険料を、納付書による納付や口座振替などにより自分で納めます。(厚生年金に加入している配偶者に扶養されている場合は、第三号被保険者となり個別に納付する必要はありません。)
将来いくら受け取れるのか
高齢者に給付される国民年金の年金額は、物価や賃金の変動率とマクロ経済スライドという社会情勢に合わせて給付水準を自動的に調整する仕組みにより、毎年改定されます。
令和5年度の老齢基礎年金額(20歳~60歳までの40年間、国民年金に加入していた人が65歳から受給を開始した場合の年金額)は795,000円*です。この年金額は、国民年金保険料を40年間×12月=480月納付した場合の満額になりますので、もし未納の期間があった場合はこの金額より少なくなります。
また、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上なければ、老齢基礎年金を受け取ることはできません。
*令和5年度の年金額は、法律の規定に基づき、新規裁定者(67 歳以下の方)は前年度から 2.2%の引き上げとなり795,000円、既裁定者(68 歳以上の方)は前年度から 1.9%の引き上げとなり792,600円です。
2.学生納付特例制度とは
20歳の誕生日を迎える前に、日本年金機構から国民年金とその保険料の納付についての案内が、ご自宅宛てに届きます。
そして、20歳の誕生日の約2週間後に、同じく日本年金機構からご自宅宛てに、国民年金加入のお知らせと基礎年金番号の通知書、納付書、各種申請書の一式が封書にて届きます。
20歳になったら、国民年金への加入が義務付けられているわけですから、この納付書で保険料を支払うことになるわけです。
しかし、学生の場合、収入がなく、保険料の納付が困難となる可能性があります。そのため、本人の所得が一定以下の学生を対象として、申請により在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」が設けられています。
学生納付特例制度は本人が申請
「学生だから払えない」と何もしなかった場合は、単純に「未納」となります。
学生納付特例を利用する場合は、国民年金加入のお知らせと一緒に送付される「学生納付特例申請書」に本人が記入したうえで送付します。「未納」と「学生納付特例の対象」では、保険料を払っていないという点で同じように見えますが、実は全く異なりますので、学生納付特例制度を利用する場合は、速やかに申請書を提出する必要があります。
未納のままだとどうなるのか
国民年金保険料の時効は2年ですから、過去2年間分については遡って納付することができます。しかし、2年以上経過した分については、納めることができませんので、受給資格期間に含まれませんし、将来の受取額が少なくなります。
また、国民年金への加入は義務となっていますので、未納の場合、催促状が届き、個別訪問による徴収なども実施され、最後には財産が差し押さえられたという事例もあります。
保険料の追納とは
手続きもせずに、ただ保険料を払わなかった場合は、日本年金機構より督促状が届きます。督促状には改めて納付期限が記載されており、その日までに納付すれば、延滞料金はかかりません。しかし納付期限を過ぎると「未納」となり、一定の割合で延滞金が加算され、2年を経過すると、遡って納付することができなくなります。
未納期間は受給資格期間として合算されず、未納期間の合計が30年を超えると、仮に5年間は納付していたとしても国民年金を受け取ることができません。受給資格を得られなかった人の為に、60歳以降も保険料を納めることができる制度もありますが、皆さんが対象となるかはその時になってみないとわかりません。
保険料の納付が難しい際には、あらかじめ手続きをして、保険料の免除・納付猶予や学生納付特例の承認を受けることが重要です。承認を受けた期間は受給資格期間として合算されますが、年金受取額には反映されません。
例えば、4月生まれの人が学生納付特例の承認を受けた後、23歳の4月に就職して厚生年金に加入した場合、36か月間納付していなかったことになります。その後60歳まで厚生年金に加入し続けたとしても、年金受取額は
≪基礎年金額 × (480-36)/480 = 基礎年金額 × 92.5%≫
となり、仮にその年の基礎年金額が795,000円だった場合は、年間で約59,000円が減額されることになります。この減額は生涯にわたり継続します。満額受給するためには学生納付特例の承認を受けた期間も遡って追納する必要があります。
学生納付特例の承認を受けた期間は、10年以内であれば保険料をさかのぼって納めることができます。ただし、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますので注意が必要です。
学生納付特例の承認を受けているので、追納しなくても督促状が届くことはありません。
3.納付する際には知っておきたいお得な制度
前納制度について
国民年金保険料をまとめて2年分前納すると、保険料が割り引かれる制度です。学生特例制度を利用せず、親御さんが納付する場合は検討してみてください。
令和5年度の口座振替2年前納割引額は、16,100円です。令和5年度の国民年金保険料が16,520円ですから、約1か月分が割り引かれることになります。口座振替だけでなく、現金・クレジットカード納付でも2年前納が可能です。(現金・クレジットカードの場合は割引率が異なります。)
付加年金について
定額保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされます。
付加年金の年金額は、200円×付加保険料納付月数となり、老齢基礎年金に上乗せされて受給できる終身年金ですが、定額のため、物価スライド(増額・減額)はありません。
4.保険料を親が納付した場合
もし、親御さんが、お子様の保険料を負担した場合は、親御さんの社会保険料控除の対象となり、納付した保険料が全額控除となります。2年前納した場合は①納めた年に全額控除する方法か②各年分の保険料に相当する額を各年において控除する方法を選択することができます。
年末調整もしくは確定申告にて、控除申請することを忘れないようにしてください。
クレジットカードも利用できますので、ポイント還元なども上手に利用してください。
5.まとめ
お子様が20歳の誕生日を迎えた2週間後に、お子様宛てに日本年金機構からオレンジ色の封書が届きます。中には大量の納付書が入っており、新たな支出に戸惑う方もいらっしゃるでしょう。学費などの支出に加えての保険料納付は、負担と感じるご家庭も多いと思います。
大学院への進学を希望され、その間も学生納付特例を活用すると、将来の追納が大きな負担となる可能性もあります。また、保険料分を別途運用しようとされる方もいらっしゃいます。いずれにせよ、そのままにして納付しないと「未納」となってしまいますので、家計の事情と、お子様の今後の進路も踏まえて、納付するのか、学生納付特例を申請するのかよく話し合い、学生納付特例を活用する場合は、速やかに申請することを忘れないでください。