40代で始める、おひとりさまの終活 その2

前回は、おひとりさまの終活として、1つ目の目的「より良く生きるため」に生前のリスクに備える方法についてお伝えしました。
今回は、2つ目の目的「希望する最期を迎えるため」に死後のリスクに備える方法についてお伝えします。

死後のリスクに備えましょう

人がなくなると様々な手続きが必要となりますが、どんな人でも、亡くなった後の手続きを自分で行うことはできません。自身の希望通りに死後の手続きが行われなかったり、お世話になった人に迷惑をかけてしまうリスクに備えておく必要があります。死後発生する以下の手続きを誰に頼むのか検討し、信頼できる人に伝えておきましょう。

<死後に必要な主な手続き>
 ●死亡届や社会保険関係(公的年金・公的医療保険・公的介護保険など)の届け出
 ●火葬・埋葬の手続き
 ●賃貸契約や公共料金、携帯電話等の解約手続き
 ●亡くなった人の準確定申告
 ●相続手続き(資産の処分)
 ●家財道具など資産の処分

最期を迎えた後を考えてみましょう

 最期を迎えた後のことを自分でやることはできませんから、縁起でもないと敬遠することなく、冷静に判断することが可能で動きが取りやすいうちに、具体的に検討していきましょう。

葬儀やお墓のこと

 どんな葬儀にしてほしいのか、費用はどうするのか、誰に知らせて欲しいのかなどを、エンディングノートに記入しておきましょう。お墓については、墓石を建てる以外に樹木葬や納骨堂といった選択肢もあります。それぞれの特徴や費用を確認し、希望のスタイルを考えてみてください。
最近では、おひとりさまの友人・知人同士でお金を出し合って同じお墓に入る墓友を探して、生前から支えあう人もいます。

 永代供養や納骨堂の契約は、多くの場合、生前に本人が手続きをすることとなります。選択肢の一つとして、費用や契約期間を確認し、実際に見学してみましょう。
 また、永代供養や納骨堂の契約をしても、誰にもそのことを伝えていないと無駄になってしまう可能性がありますので、注意してください。

SNSや個人情報のこと

 SNSのアカウントは、亡くなった後も残り続けます。その結果、乗っ取られるなど悪用されることもありますので、削除依頼をしてもらえるようお願いしておく必要があります。アカウントの削除方法はSNSによっても異なりますので、調べておくことも必要ですが、不要なアカウントを整理することも忘れないでください。

遺言書を準備しましょう

 亡くなった後に財産(現金や株券などの有価証券、土地、建物、自動車、生命保険など)が残る場合、遺言書を書いておくといいでしょう。通常、遺産を相続するのは法定相続人(配偶者、子、親、兄弟姉妹)となります。相続人がいない場合は親密であった人(特別縁故者)が遺産を受け取れることもありますが、特別縁故者が名乗り出なければ、あなたの財産は国に帰属することになります。
 エンディングノートには法的効力がありませんので、もし自分の財産を渡したい人がいるのであれば、遺言書を書いておく必要があります。遺言書を書いておけば、甥や姪、お世話になった人、NPO法人や自治体に財産を渡すことができます。

終活に関連する制度(死後編)

自筆証書遺言保管制度

 遺言書には自筆で作成する「自筆証書遺言」や、公証人立会いのもと作成する「公正証書遺言」などの種類があります。自筆証書遺言は紙とペンと封筒があれば作成可能で費用もかかりません。しかし、せっかく作成しても亡くなった後に発見されなかったり、発見後に改ざんされるリスクがあります。また、発見した人が家庭裁判所の検認を受けないままに開封してしまうと、遺言書が無効となってしまいます。


 そこで検討したいのが、「自筆証書遺言保管制度」です。2020年7月から始まったこの制度は、作成した自筆証書遺言を法務局の遺言書保管所へ預け保管してもらうというもので、紛失や改ざんのリスクを低減することができます。遺言書の保管申請時に、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官の外形的なチェックが受けられるので安心ですし、家庭裁判所の検認が不要となる点もメリットです。
 また、戸籍担当部局と連携して遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合に、あらかじめ指定した人(1名)に対して、遺言書が保管されている旨をお知らせすることが可能ですので、発見されないといったリスクも小さくなります。
 ただし、必ず本人が法務局に出向いて申請する必要があり、一件につき3,900円の申請手数料がかかります。

死後事務委任契約

 亡くなった後の手続きを第三者に委任する契約です。死後に発生する手続きについての希望は、エンディングノートや遺言に記入しても、法的効力がありません。また、成年後見人(任意後見人・法定後見人)は被後見人の死亡をもって業務終了となるためお願いすることができません。
 希望する死後の手続きを確実に実現するためには死後事務委任契約を結んでおくことが必要となります。
 前回「40代で始める!おひとりさまの終活 その1」でお伝えした、財産管理等委託契約、任意後見人契約と同時に検討すべき制度です。

まとめ

 「終活を始めましょう」と提案すると、「縁起でもない」、「まだ必要ない」、「好きにしてもらって構わない」などの言葉が返ってくることがあります。中には「自分は長生きしないから必要ない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。ところが、「じゃあ、明日不慮の事故で体が不自由になったり、お亡くなりになったとしても、後悔はありませんか?」とお尋ねすると、皆さん「それは困る」とお答えになるのです。
いつまでも今のように身軽に動けて、冷静な判断ができるわけではありません。いつ何が起こるか、誰にも予測はできません。もしかすると、明日何かが起こるかもしれないのです。

 過去を振り返り、現在の暮らしを整理し、冷静に将来を見つめ、不安への対処方法の検討することが、終活です。お世話になった人に迷惑をかけないよう配慮ができ、今の暮らしを充実させることができるのが、終活です。

 想いを伝えるのではなく、希望をかなえるためのエンディングノートを書いてみませんか?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です